米日財団(USJF)は、2025年10月29日、東京・都市センターホテルにおいて、初の「若手市長賞」授賞式およびラウンドテーブル・ディスカッションを開催しました。本イベントには、政府、学界、メディアのリーダーが一堂に会し、日本の新しい世代の市長たちの功績を称えるとともに、地域の再生が日本の民主主義を強化するうえで果たす重要な役割に光を当てました。
2025年に創設された「若手市長賞」は、45歳未満で、公務においてビジョン、誠実さ、革新性を発揮している優れた市長を顕彰するものです。受賞者には、都市計画、教育、地方行政などの分野での国際的な学びを促進を目的とし、米国での視察を支援する100万円の助成金が授与されます。
今回の受賞者である岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長は、市民参加の推進、人口の安定化、そしてデジタルトランスフォーメーションの推進におけるリーダーシップが高く評価されました。藤井市長のもとで、美濃加茂市は包摂的で市民主体の行政運営の全国的なモデルとして注目されています。
冒頭の挨拶で、米日財団代表理事のジェイコブ・スレシンジャー氏は、地域のリーダーを支援することの重要性を強調しました。「日本各地の自治体には、革新と変化の大きな可能性が秘められています。本取り組みを通じて、地域間の交流が米日財団の使命の重要な一部となり、再生・対話・共有のための協働プラットフォームを形成していくことができると考えています」と述べました。
米日財団理事/ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン共同創設者・代表理事であり、本賞の立ち上げに中心的な役割を果たした小林りん氏は、日本の地方自治体における改革や革新の可能性、そしてその取り組みがこれまで以上に全国的に注目されるべきであることを強調しました。「国家全体の改革には時間がかかるかもしれませんが、自治体が地域の課題に果敢に取り組み、必要とされる変化を実行していけば、他の自治体にも広がり、結果として大きな変革につながる可能性があります」と述べました。さらに、「米国の自治体とのつながりは、新しい政策アイデアや視点を得るきっかけとなり、日本の地域に持ち帰り実践するためのヒントにもなるでしょう」と続けました。
本イベントでは、イェール大学で政治学を教えるチャールズ・マクリーン教授による研究発表も行われ、独自に収集した地方政治のデータ分析と、北海道から九州まで全国の市長へのインタビュー調査に基づく知見が共有されました。この研究は、人口減少と高齢化が自治体運営にもたらす課題、そして若い世代が公的な役割に参加する必要性を明らかにする一方、地域社会の福祉や基礎的な公共サービスを重視する若い改革志向の候補者に対して有権者が強い支持を示している点を示しています。
千葉県の熊谷俊人知事は、藤井市長へ賞を授与するとともに、そのリーダーシップ、とりわけ子育て政策を高く評価しました。熊谷知事は「地方での取り組みが形となり、国に認められ、全国へ広がっていきました」と述べ、さらに美濃加茂市と同規模・同質の米国の都市で政策研究を行うという藤井市長の判断を称賛し、「全国的な変化を生み出す、地域に根ざした改革の好例です」と強調しました。また、「今回の取り組みを通じて若手市長たちの活動がさらに広がり、そこから新しい改革や良い事例が地域から次々と生まれ、最終的には日本全体の活性化につながると確信しています」と述べました。(熊谷知事のコメント全文は、こちらの動画からご覧いただけます。)
授賞式に続き、藤井市長は、助成金を活用してアイオワ州ダビューク市を訪問する計画を発表しました。ダビューク市は、美濃加茂市とほぼ同規模で、「スマートシティ」施策や住民参加型の行政運営で知られています。藤井市長は「今回が初めての渡米となります。ダビューク市の経験から学び、それを日本の地域に持ち帰って、地方自治の強化につなげたいです」と抱負を述べました。
その後は、小林りん氏をモデレーターとしてラウンドテーブル・ディスカッションが行われ、藤井市長とマクリーン氏による、「日本における公職の課題と可能性」をテーマとした活発な意見交換がありました。会場からは他の公職者や報道関係者などからも多くの質問が寄せられ、幅広い市民参加、若者の政治参加、そして分野横断的な協働の重要性が再認識されました。
最後には米日財団理事会議長のローレンス・フィッシュ氏から藤井市長への祝福の言葉があり、今後の米日間における地方レベルの協働を引き続き支援していく財団の姿勢を改めて示しました。フィッシュ氏は「本賞は、一人の市長の功績を讃えるものであると同時に、未来の民主的リーダーシップへの投資でもあります」と述べています。