小説家・ジャーナリストのカリン・タナベ氏(USJLP 2019, 2022)と共同制作者ヴィクトリア・ケリー氏による新作ドキュメンタリー『Atomic Echoes: Untold Stories from WWII(アトミック・エコーズ:語られざる第二次世界大戦の物語)』が、8月1日より全米のPBSで放送開始され、10月1日までPBSアプリで配信されています。本作は、米国の原爆退役軍人と日本の被爆者の証言を対話へと導き、「原爆被害は日本だけの経験であり、原子力は米国の責任である」という固定化された物語に挑戦します。
タナベ氏は米日リーダーシップ・プログラム(USJLP)のフェローであり、本作品は同プログラムのフェロー向けスタイペンド事業から始まりました。制作が進む中、タナベ氏とケリー氏は米日財団の助成プログラムに応募し、その支援をきっかけにプロジェクトを大きく前進させることができました。タナベ氏は「米日財団の助成金は、私たちが最初に得た資金でした。精神的にも大きな支えになり、プロジェクトが本当に可能なのだと感じることができました」と振り返ります。
タナベ氏が掲げる本作の使命は、核戦争は「日本だけの問題ではなく、世界的な問題」であると人々に理解してもらうことです。本作では、被ばくや政府による沈黙の強制に苦しんだ米国退役軍人と、何十年にもわたり原爆被害の記憶とともに生きてきた日本の被爆者、それぞれが背負った核の傷跡を描き出します。
この映画は、教室や地域センターで活用できる「平和のためのツール」として構想されています。今後は、ワシントンD.C.のカーネギー国際平和基金やロサンゼルスの全米日系人博物館での上映が予定されており、日本国内でも学校・大学での上映ツアーを準備中です。若い世代にこの重要な物語を引き継いでもらうことが狙いです。
米国内にお住まいの方は、お近くのPBS局またはPBSアプリで視聴いただけます。
本作の制作背景については、本財団の「助成先紹介」シリーズの記事をご覧ください。