トレンドと変革者たち

日本の寄付の今 そしてこれから
シリーズ紹介

ソーシャルセクターの現在地──そして変革の可能性

日本は、共感や共助といった価値観が社会に深く根づいている国だと言われています。しかし、寄付活動や非営利分野の規模に関しては、それを裏付けるような数字が長らく見られないのが実情です。

2020年、日本国内の個人寄付総額は1兆2,000億円(約80億ドル)で、GDP比ではわずか0.23%にとどまりました。対して、同年にアメリカの個人が寄付した総額は3,740億ドル(約53兆円)超で、GDPの1.37%を占めています。これは日本の約6倍に相当する割合です。

この大きな差は、単に経済規模や国民の「寛容さ」の違いだけでは説明できません。日本におけるソーシャルセクターの構造的な特徴と制約が、寄付のかたちと量の両方に強く影響しているのです。

「社会的な環境の後押しがあるにもかかわらず、ソーシャルセクターは未だにソーシャルイノベーションの主導者となり得ていない。」(5)

2024年10月、米日財団は、日本ファンドレイジング協会(JFRA)に対して、日本の非営利・ソーシャルセクターの構造と将来性に関する調査を委託しました。本文中の引用はいずれもその調査報告書からのものです。同報告書は、日米の非営利セクターを比較分析しつつ、日本における社会的変革の資金調達や支援のあり方が、今まさに転換期を迎えていることを示唆しています。

💡

JFRAによるエグゼクティブサマリーより

日本のソーシャルセクターは、米国に比べれば発展途上の段階にあるものの、今まさに大きな成長の可能性を秘めた転換点に立っている。個人・法人による寄付は年々増加傾向にあり、公益法人や信託制度に対する法制度改革も進みつつある。経済同友会、インパクトスタートアップ協会、新公益連盟の主導による企業とソーシャルセクターの協働も広がりを見せている。

また、若い世代の起業家たちによるソーシャルインパクトを重視した財団の設立も増加しており、ファミリー・ガバナンスや世代間の資産移転に対する関心の高まりが背景にある。今後は、遺贈や信託、ファンド等を通じた富裕層による寄付の増加も見込まれている。一方で、インパクト投資市場は急速に拡大しており、休眠預金を原資とするカタリティック・キャピタル(触媒的資本)の動員も始まっている。

本記事は、3回に渡り日本の市民社会のエコシステムを読み解いていく試みの出発点となるものです。非営利組織の構造、プレイヤー、政策、そして社会変革を支える投資の動向について取り上げていきます。本シリーズは、米日財団が今後進める「日本の市民社会への支援」への重点的なミッションシフトに向けた、ひとつの道しるべとなることを目指しています。今回はまず、日本の非営利セクターがどのように構成されているのか、なぜ支援を集めるのが難しいのか、そしてどのような点で日本独自の寄付文化や資金循環の構造が見られるのか──「現在地」を理解することから始めます。

※なお、本報告書における日米比較の一部には、制度・定義・データ収集方法の違いがあるため、単純な数値の比較には限界があることをご了承ください。


日本の寄付の今 そしてこれから


← トレンドと変革者へ戻る

Submit Newsletter Form
参加してつながりを保ち、最新の助成金、プロジェクト、イベントなどについていち早く知ってください。
newsletter-bg
Ellipse 41 newsletter-circle-2b Ellipse 42 Newsletter4