助成先 | 全米日米協会連合 (2025年3月受賞)
プロジェクト | 日米関連団体向けインタラクティブ・オンラインハブの構築
「私は数十年この分野に関わってきましたが、組織の吹雪の中で完全に迷ってしまったのです。」
アンドリュー・ワイレガラ氏は、アジア各地での長年の仕事を経てワシントンD.C.に戻った際、日米交流の世界に自然と戻れるものと思っていました。高校時代の留学をきっかけに、日本での学業、大学院での専門的な研修、外交官としての勤務、そして人と人をつなぐ活動に長年携わってきた彼の人生は、日本との関わりによって形づくられてきました。しかし今回ばかりは、これまでとは違う感覚がありました。
「そこには本当に素晴らしいエコシステムがありました」とワイレガラ氏は振り返ります。「けれども、私は組織の吹雪の中で迷っていたのです。」数十年にわたる経験を持っていても、誰が、どこで、何をしているのかを把握するのは容易ではありませんでした。イベントは重なり、略称は入り乱れ、連携の機会に気づくのは、すでに通り過ぎた後ということも少なくありませんでした。
当時、ワイレガラ氏は、米国およびカナダにある40の独立した日米協会を束ねる、設立から約50年を迎える非営利組織、全米日米協会連合(National Association of Japan-America Societies:NAJAS)の会長に就任したばかりでした。会員団体を支援することは、今もなおNAJASの中核的な使命です。しかし就任から数カ月が経つ中で、ある疑問が浮かび上がってきました。内部の人間でさえ全体像を把握するのが難しいとすれば、外から見たこの分野は一体どのように映っているのでしょうか。

NAJAS 99ガイド
反応は、小さな取り組みから始まりました。NAJASはインターンに依頼し、日本に関係する団体の一覧をまとめる作業に着手しました。その成果が「NAJAS 99ガイド」です。日米分野で活動する主要な団体を俯瞰的に示したスナップショットでした。「実際のところ、いくつの団体があるのか分かっていなかったのです」とワイレガラ氏は語ります。「だから、便宜的に数字を決めました。」
ところが、その反応は予想を超えるものでした。ガイドは非公式に共有されていきましたが、NAJASの加盟団体や協力団体、この分野で活動する個人から次々とメッセージが届きました。感謝の言葉が寄せられ、同僚に共有されたことが伝えられ、更新はいつになるのかという問い合わせもありました。
その反応が示していたのは、混み合ったエコシステムの中で、共通の参照点が強く求められていたという事実でした。一方で、限界もすぐに明らかになります。「1年も経たないうちに、もう情報が古くなっていました」とワイレガラ氏は説明します。「キーワード検索もできず、各団体自身による確認も行われていなかったのです。」ガイドは構想の有効性を示しましたが、静的な情報だけでは、生きたネットワークの変化に追いつくことはできませんでした。
なぜ今、インフラが重要なのか
この取り組みが生まれた背景には、時代的な要請がありました。過去10年の間に日本への関心は高まる一方で、非営利団体を取り巻く環境は厳しさを増しています。予算は縮小し、スタッフは限られ、より効率的な連携が求められるようになりました。新型コロナウイルス感染症の拡大は、こうした変化をさらに加速させ、団体の集まり方や資金調達、関係性の維持のあり方そのものを大きく変えました。「ビジネスの世界であれば、統合という選択肢を取るでしょう」とワイレガラ氏は指摘します。「しかし、非営利の分野ではそれは起こりません。だからこそ、次善の策は、より良くつながることなのです。」
エコシステムに必要だったのは、新たなプログラムではなく、共有されたインフラでした。派手さはないものの、摩擦を減らし、連携を容易にするための基盤的な機能です。この認識は、NAJASにとって一つの転換点となりました。「47年にわたり、私たちは会員サービスを基盤とする組織として活動してきました」とワイレガラ氏は語ります。「しかし同時に、日米両国の人と人をつなぐ、より広いプラットフォームになれる可能性があると気づいたのです。」
ハブの構築に向けて

こうした方向転換は、「NAJASハブ」という形をとって具体化していきました。NAJASハブは、日米に関わる組織全体のエコシステムに向けて設計された、双方向型かつ日英バイリンガルのオンライン・プラットフォームです。既存のネットワークを置き換えるのではなく、それらをつなぎ合わせることで、新たに関わる人々にも、長年活動してきた関係者にも、より参加しやすく、見通しのよい環境を提供することを目指しています。この構想を前進させる上で、米日財団からの支援は決定的な意味を持ちました。「あの支援があったことは、本当にゲームチェンジャーでした」とワイレガラ氏は語ります。政府関係者からも関心は寄せられていましたが、公的資金では、開放性や柔軟性に制約が生じる可能性がありました。「民間財団から支援を得られたことで、前に進むことができました。ITベンダーや、私たちよりもシステム設計や持続可能性に詳しい専門家と本格的に話し合いを始めることができたのです。」
米日財団の投資は、NAJASという組織そのものだけでなく、ソーシャルセクターにおけるインフラ強化の価値に対する信頼を示すものでした。「もし米日財団が扉を開いてくれなければ、新たなパートナーとこうした対話を重ねることはできなかったでしょう」とワイレガラ氏は述べています。これまでの取り組みの一端は、2025年に開催されたNAJASネットワーク会議の報告書およびハイライト動画でも確認することができます。
カレンダー機能
NAJASハブの最初の機能は、あえてシンプルなものとして設計されています。それが、共有カレンダーです。この発想の背景には、繰り返し聞かれてきた、ある共通のもどかしさがありました。たとえば、ある大学が著名な日本人作家を招いた講演会を開催します。その一方で、同じ週に、街の反対側では日米協会がよく似た内容のイベントを企画している。しかし、互いにその存在を知らないまま準備が進みます。結果として、登壇者は重複し、聴衆は分散し、連携の可能性は静かに失われてしまいます。
「誰もが広報や発信をしたいと思っています」とワイレガラ氏は語ります。「だからこそ、最初の一歩として、人々のカレンダーにイベントを載せること以上に有効な方法はないのです。」
この共有カレンダーでは、各団体が自らのプロフィールを管理し、イベント情報を発信することができます。ネットワーク全体にとって即効性のある価値を提供しながら、参加を自然に促す仕組みです。さらにカレンダーは、将来的な機能拡張への入り口でもあります。登壇者やインターン、プログラム修了生に関する検索可能なデータベース、エコシステムを可視化するマップ、そして将来的には助成金や奨学金に関するデータベースの構築も構想されています。
成功のかたちとは
ワイレガラ氏が成功の指標として重視しているのは、利用の広がりです。「このカレンダーは、最初の6か月間で数多くの団体が実際に使わなければ、機能しないのです。」
5年後を見据えたとき、氏が思い描くエコシステムの姿は、今とは大きく異なります。新たに関わる人々が短時間で全体像を把握できるようになり、小規模な団体であっても、より良いつながりを通じて、その規模以上の影響力を発揮できるようになります。日本を拠点とする団体も、個人的な紹介に頼ることなく、米国のパートナーと自然に出会えるようになるでしょう。これまで見過ごされがちだった機会も、次第に少なくなっていきます。
そしてNAJASハブは、真の意味で国境を越えたプラットフォームへと成長していきます。米国側だけでなく、日本側の団体によっても形づくられる存在です。この側面はいまだ構築途上にありますが、プロジェクトの中核をなす構想であり、NAJASがアメリカ・フレンズ・オブ・インターナショナル・ハウス・オブ・ジャパンおよび国際文化会館と連携する判断をした重要な理由でもあります。
米日財団にとって、このハブへの支援は、特定のプログラムやイベントにとどまらず、市民社会そのものへのコミットメントを体現するものです。人と人、組織と組織の関係が長く持続していくために不可欠な「つながりのインフラ」を支えるという姿勢です。もしこの構想が成功すれば、NAJASハブが注目を集めることはないかもしれません。ただ、連携がより容易になり、この素晴らしいエコシステムが一つとして機能するようになるでしょう。ぜひ、NAJASハブについて理解を深め、支援にご参加ください。
(画像)従来型のマッピングを超えて — 昨年4月にワシントンD.C.で開催された全米桜祭り(Sakura Matsuri Street Festival)にて、NAJASのスタッフや関係者が写っています。NAJASはこのような場に継続的に参加し、コミュニティづくりやボランティア、インターンの発掘に取り組んでいます。