助成先 | Connecticut College (2025年1月受賞)
プロジェクト | コネチカット・カレッジ管弦楽団東京公演プログラム
コネチカット・カレッジ・オーケストラの国際演奏ツアーを企画し始めたとき、ショウ・ピン・リウ教授は演奏曲目だけでなく、「参加しやすさ」のことを考えていました。(写真提供:Peichang Zheng)
「音楽は国境を越える共通言語だと言いながら、経済的な理由で学生の参加を妨げるのだとしたら、どんな気持ちになるでしょうか?」とリウ氏は問いかけます。「全員がオーディションを受け、全員が同じように努力を重ねてきました。その中の誰かを置いていくなんてことができるでしょうか?」
こうした「誰ひとり取り残さない」という姿勢が、ツアー準備のすべての決定を導きました。そして米日財団の支援もあり、全員が一緒に参加できたのです。2025年3月、リウ氏は31人の学生楽団員を率いて東京に渡り、プロのオーケストラである東京シンフォニアと共に1週間にわたる集中リハーサルと合同コンサートを行いました。多くの学生にとっては初めての海外渡航であり、中には飛行機に乗ること自体が初めての学生もいました。このツアーは、異文化協働と包摂、そして音楽が持つ人をひとつにする力を実感する、変革的な学びの機会となりました。
ワークショップから世界の舞台へ
このアイデアは控えめなところから始まりました。自身の専門的研鑽のために参加できるワークショップを探していたリウ氏は、著名な指揮者ロバート・ライカー氏が主宰する、東京シンフォニアによる「次世代の指揮者育成国際指ワークショップ」を見つけ、思い切って連絡を取り、ある大胆な提案をしました。「自分の学生オーケストラをプロの楽団と合同演奏会で共演させてもらえないでしょうか?」(写真提供:Sean Elliot)
驚いたことに、ライカー氏はその提案をすぐに受け入れました。個人的な問いかけから始まった話は、やがて本格的な国際協働へと発展しました。リウ氏とライカー氏は協力して、アメリカの学生奏者と日本のプロ奏者が同じ舞台に立ち、演奏するだけでなく、共にリハーサルを重ね、交流し、学び合うためのプログラムを設計したのです。
大学の音楽活動において、プロ楽団と学生オーケストラが同じ舞台で共演する機会はほとんどありません。だからこそリウ氏にとって、この挑戦には大きな意義があったのです。
音楽を超えた文化的な学び
このツアーは観光旅行ではありません。オーケストラは約1年をかけてベートーヴェン尽くしのプログラム──序曲『プロメテウスの創造物』、ピアノ協奏曲第1番、そして交響曲第7番──に取り組みました。技術的にも感情的にも難易度の高いレパートリーです。「学生たちが1人の作曲家だけを演奏することに飽きてしまうのではと心配していました」とリウ氏は振り返ります。「ところが、驚いたことに彼らは夢中になったのです。1年間、ベートーヴェンに浸っていました。」
学生たちにとって学びの機会は音楽だけではありません。コネチカット大学の小林久恵教授が、全学生を対象に日本語と日本文化の特別講座を開講しました。東京では文化的な名所を訪れ、茶道の体験にも参加しました。「ツアーの中盤には、学生たちは無意識のうちに周りの人にお辞儀をしていましたよ」とリウ氏は語ります。東京シンフォニアとのリハーサルも、単なる技術的・美的な側面を超えた没入体験となりました。「学生たちは彼らの献身とスタミナに感銘を受けていました」とリウ氏は説明します。「アメリカでは通常3時間程度のリハーサルですが、東京シンフォニアは毎日6時間も行っていたのです!」
さらに協働を深めるため、コネチカット大学の学生一人ひとりに東京シンフォニアの奏者がペアとして付き、譜面台を共有しながら音楽的な語彙を育んでいきました。「両者の間には言葉の壁がありましたが、音楽を通じてコミュニケーションを取る方法を学んでいました」とリウ氏は話します。「お互いのフレージングを見たり、音楽的なアイデアを分かち合ったりするようになったのです。その光景は本当に美しかったです。」(写真提供:Motokazu Ichinoseki)
実践される公平性
コネチカット大学オーケストラがこれまでで最も野心的なプロジェクトに挑もうと準備を進める中で立ちはだかった、全体の取り組みを揺るがしかねない障害が費用負担の問題でした。大学は留学プログラムに対して手厚い支援を行っていますが、今回の演奏ツアーは従来型の資金支援の対象外であり、何人かの学生が参加できなくなる恐れがあったのです。
そこで支援に乗り出したのが米日財団でした。この助成金が、経済的支援を必要とする6人の学生について、渡航費、楽器のレンタル代、文化活動費、コーチング費用などを賄ったのです。
「米日財団からの思いがけない支援のおかげで、全員の学生がツアーで平等だと感じられるようになりました」とリウ氏は語ります。「経済的援助を受けた学生たちも、他の学生と何の隔たりもなく、この体験のすべてにしっかりと参加することができたのです。」
帰国 そして未来へ
コネチカットに戻っても、オーケストラの勢いは止まりませんでした。地域で最も著名な演奏ホールであるガード・アーツ・センターにおいて、コネチカット大学オーケストラはニュー・ロンドン高校合唱団と共に凱旋公演を行いました。多くの合唱団員は多様な公立学校の出身で、アルバイトを掛け持ちしたり、大学進学に迷っていたりと様々な事情を抱えていましたが、音楽を通じて2つのグループはつながり、ここでも米日財団の支援が響き渡りました。
「日本へのツアーがなければ、ガードでの私のコンサートをあれほど多くの人が応援してくれることはなかったと思います」とリウ氏は語ります。「このコンサートには、温かさに満ちた雰囲気がありました。」
東京での経験は、未来への種まきにもなりました。リウ氏は、コネチカット大学の姉妹校である同志社大学との協働を含め、オーケストラの国際的なパートナーシップをさらに拡大したいと考えています。また、東京シンフォニアの音楽家をコネチカット州ニュー・ロンドンに招き、双方向の交流を実現することも夢見ていると話します。
学生たちにとって、この旅の思い出はまだ鮮明ですが、リウ氏はその本当の影響が何年も先に現れることを知っています。「この31人の学生たちが、今回の旅で育んだ日本への愛情から、将来また日本に戻ってくることは十分にあり得ると思います。あらゆる意味で、このツアーは米国と日本の関係に寄与するものだったと信じています。」
受け継がれる可能性
リウ氏にとって、このツアーは単なる職業上のハイライトではなく、個人的な使命の達成でもありました。台湾で育ち、ドイツで教育を受け、現在は米国で教える彼女は、音楽が人と文化をつなぐ架け橋になると長く信じてきました。その信念を、米日財団の支援を得て、一つひとつの弓の動き、一度のリハーサル、一回のフライトを積み重ねながら、息づく実演へと変えたのです。
「今回の経験を通して、私たちは日本の音楽シーン、音楽的遺産、そして音楽家の姿勢について本当に多くを学びました」と彼女は語ります。「学生たちにとって、この記憶は長く残り、彼らの音楽家として、そして人間としての成長は計り知れないものとなりました。」
(写真提供:Sean Elliot)