米日財団 リサーチ

コロンビア大学とアリゾナ州立大学の研究チームは、最先端の人工知能(機械学習)を活用し、ニューヨーク市における15年間(2008〜2022年)のデータを分析して、都市犯罪を誘発する真の要因を考察しました。

犯罪は主に貧困や人口統計といった社会経済的要因によって引き起こされると考えられがちですが、本研究では、根底にある社会経済的状況と並び、「気温」と「人間のモビリティ(人々が都市内をどのように移動するか)」が、市内の犯罪率の空間的変動を予測する上で一貫して強力な因子であることが示されました。

主な知見

本研究では、気象やタクシーの利用状況から、騒音苦情、SNSの動向にいたるまで、あらゆるデータと犯罪率との相関関係を分析しました。その結果、以下の事実が明らかになりました。

  • 犯罪を誘発する暑さ:気温は極めて大きな要因でした。気温が上昇すると犯罪率も高くなります。これは、暑さが身体的ストレスや不快感をもたらし、人々を攻撃的にさせるという「一般的攻撃理論(General Agression Theory)」を裏付ける結果となっています。
  • 機会を生み出す移動:人々の移動パターンも重要な要素です。公共交通機関(地下鉄)の利用率の高さは、犯罪率の上昇と強く結びついていました。これは、多くの人が公共スペースを移動することで、犯罪につながる機会や接触が単純に増加するという「日常活動理論(Routine Activity Theory)」を支持しています。逆に、大雨の日やコロナ禍のロックダウン期など、人々が外出を控えた時期には犯罪率が大幅に低下しました。
  • 地域の雰囲気による影響:騒音苦情の件数の多さや、SNS上で発信されるネガティブな感情の割合の高さも、犯罪率の上昇と関連していることが判明しました。
  • 複雑に絡み合う地域性:気温やモビリティが市内全域に共通する一貫した要因であった一方で、社会的な要因(収入、教育水準、人種など)が犯罪に与える影響は、具体的な地域や行政区によって異なる傾向を示しました。

本研究が重要である理由

本研究は、犯罪が単に「治安の悪い地域」だけで片付けられる問題ではなく、環境(気象)、行動(通勤・通学)、そして社会的課題が複雑に絡み合った結果であることを浮き彫りにしています。例えば、モビリティの急増(多くの人々が移動すること)は窃盗などの非暴力犯罪を誘発しやすい一方で、暴力犯罪はこうした単純な移動のトレンドからの影響を比較的受けにくいことが明らかになりました。

より安全な都市をつくるための解決策の提案

著者らは、単に警察の取り締まりを強化することを提案するのではなく、今回の知見に基づき、より安全な都市を設計するための3つの「持続可能」なアプローチを提唱しています。

  1. 都市を冷却する:暑さが犯罪を誘発することから、都市は「暑さ対策」に投資すべきです。植樹を進め、緑地を創出し、遮熱・冷却通路を整備することで、猛暑日のストレスを軽減します。:
  2. よりスマートな公共交通機関の安全設計:混雑する交通拠点は犯罪の発生源になりやすいため、都市計画家は最初から安全性を念頭に置いた設計を行う必要があります。地下鉄やバスの停留所において、照明の改善やスマートセンサーの導入を進め、犯罪を抑止します。
  3. 地域ごとの特性に応じた支援:解決策は地域密着型である必要があります。これには、騒音の激しい地区での規制強化や、暑さやストレスの影響を最も受けやすい脆弱な地域へ、冷却センターや緑地を公平に配分することなどが含まれます。

メーリングリストへ登録

Submit Newsletter Form
最新の助成情報、プロジェクト、イベントなどのお知らせをいち早くお届けします。ぜひご登録ください。