大陸をつなぐ力 日米のメンターが支えるアフリカの気候・ジェンダー課題解決

助成先:AlphaMundi Foundation (AMF) (2025)
プロジェクト:グリーン・グロース・アライアンス:日米・アフリカ連携による気候・ジェンダー・イノベーション・コレクティブ


ナイロビに拠点を置く財団が、ニューヨークの金融ノウハウと東京の技術的専門性を活用してケニアの起業家を支援したら──?そこに生まれるのは、上からの支援ではなく対等なメンタリングを軸にした、まったく新しいかたちの国際協力です。

image5AlphaMundi Foundation(AMF)が立ち上げた新プロジェクト「グリーン・グロース・アライアンス」は、アフリカの中小企業(SME)と、米国・日本のメンターを結びつける試みです。参加する起業家たちは、気候変動とジェンダー不平等という世界的な緊急課題に取り組んでおり、本プログラムではその活動をさらに広げるための知識、戦略、ネットワークが提供されます。

この革新的なプロジェクトを率いるのは、米日リーダーシップ・プログラム(USJLP)の2019年および2022年フェローである中川沙和氏です。米日財団からのスタイペンドを活用し、ケニア・日本・米国を対象とした初期調査を実施。その「小さくも戦略的な助成」により、ニーズの確認、仮説の検証、プログラム設計の洗練が可能となりました。まさに、大きなイノベーションを起こすための触媒的支援といえるでしょう。

三角形のグローバルパートナーシップ

image3-1このプログラムの中核には、珍しい「三角構造」があります。アフリカの起業力、日本の専門知識、そしてアメリカの金融的革新。この三者が対等に結びつく仕組みです。日米によるアフリカ協力は、TICADやUSAIDなどの枠組みを通じて長年展開されてきましたが、本プロジェクトではアフリカを「対象」ではなく「対等なパートナー」として位置づけている点が大きな特徴です。米国による開発支援の縮小傾向が進む中、このような枠を超えた協力関係は、より重要性を増しています。

プログラムの仕組みはシンプルかつ効果的。アフリカの中小企業はメンティーとして応募し、日米の専門家はメンターとして応募します。1社あたり3〜5名のメンターが半年間伴走し、市場戦略から炭素クレジット、データ分析に至るまで多面的な支援を行います。一部のメンターにはケニア現地を訪問する機会もあり、実地の協働を通じた学びも得られます。

気候・ジェンダーの交差点から見えるアフリカの可能性

アフリカは世界の温室効果ガス排出のわずか10%未満しか占めていないにもかかわらず、その影響をもっとも強く受けています。また、アフリカ全体におけるベンチャーキャピタル投資のうち、女性起業家が受け取る割合はわずか7%。本プログラムは、こうした構造的不平等に真正面から取り組むべく、気候課題に取り組むジェンダー重視型の企業を優先的に支援対象としています。「私たちは、気候変動とジェンダー不平等こそが、世界が直面する最大の課題だと考えています」と中川氏は語ります。

image1-1支援されている企業も、単なる理想論ではありません。たとえばケニアのある企業は、アメリカミズアブを用いた飼料開発に取り組んでいます。廃棄物を有機たんぱく質へと変換し、飼料生産の環境負荷を大幅に軽減する革新的な技術です。また、タンザニアのKazi Yetuは、女性が経営する高品質茶・植物素材のブランドであり、地域社会に根ざした倫理的な原料調達と雇用創出を両立させています。

「再生型農法による高品質・オーガニック茶の生産により、女性の小規模農家が付加価値創出の工程に関与できるようになり、収入と生活水準が向上しています」と中川氏は説明します。「ビジネスとしても優れており、労働者を尊重したモデルになっているんです」と続きます。

これらの事例は、科学的根拠に基づき、かつ拡張可能な持続可能性のモデルです。ただし、こうした影響力の大きいSMEには、スケールアップに必要な能力構築支援と資金がまだまだ不足しています。

ソーシャル・ミッションに根ざした金融的思考

中川氏は、この「ビジョンと資金調達の間」をつなぐプロフェッショナルです。コロンビア大学でMBAおよび国際関係学修士を取得後、東京とロンドンでUBSに勤務。南アフリカでの民営化取引を通じて、「資本が社会的に弱い立場にある人々を支える」可能性に目覚めました。その後、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)、南アフリカの社会的起業に投資するインパクト投資ファンドのCEOなどを経て、ヨハネスブルグとナイロビで自身のアドバイザリー会社を設立。

image2-1現在は、AlphaMundi Foundationのエグゼクティブ・ディレクターとして、テクニカル支援、資金動員、成果指標を統合するエコシステムの構築に尽力しています。「私たちは『良いこと』をする。ただし、より持続可能で、財務的にも強い方法で」と話す中川氏。「世界は、そちらの方向に進んでいます」と続けます。

実際、AMFは1ドルのSMEへの助成によって、平均14ドルの民間投資や追加助成を呼び込む実績を持ちます。それは単なる慈善ではなく触媒です。しかも、わずか4名の常勤スタッフがそれを可能としているのです。

プログラムからプラットフォームへ

image4初年度には15のSMEと60〜80名のメンターの参加が見込まれています。アフリカでの経験は必須ではなく、必要なのは好奇心、専門性、そして耳を傾ける姿勢だけ。とはいえ、本プログラムのインパクトは、数字以上の広がりを持つかもしれません。AMFは、ツールキットやケーススタディ、ブログ記事などを通じてこのモデルを発信し、さらなる資金提供者や連携者の参加を呼びかけています。日米のメンターネットワークから、まったく新しい形の協働が生まれる可能性もあるでしょう。

米日財団にとって、このプロジェクトは単にミッションに合致するだけではなく、その使命を体現するプロジェクトです。倫理的な投資、触媒的な助成、地域主導の変革。このすべてが重なり合うことで、今まで支援が届きづらかった領域に新たなアプローチをもたらしています。

その意味で、AMFのメンタリング・コレクティブは、ひとつの価値ある支援プロジェクトであると同時に、真に機能するグローバル協力の「青写真」でもあります。これこそが、米日財団のフィランソロピーが向かう先のひとつなのです。

感謝と未来への展望

「日米気候・ジェンダー・イノベーション・コレクティブの立ち上げは、まさに絶好のタイミングでした」と中川氏。「気候変動の影響がアフリカ各地で深刻化する中、とくに女性起業家たちが持続可能な解決策の創出と拡大において重要な役割を果たしています」と話します。
「米日財団が私たちのビジョンを信じ、寛大な支援をしてくださったことに深く感謝しています。日米両国のネットワークを通じて、アフリカの包摂的かつ持続可能な未来を支える動きが広がっていくことを願っています」

 

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