2025年7月27日から8月3日まで、米日財団は京都で第26回米日リーダーシップ・プログラム(USJLP)夏季会議を開催しました。会場となったエースホテル京都を拠点に、2025年度のクラスに選ばれた42名のデリゲート(米国22名、日本20名)が、対話、文化交流、そしてコミュニティづくりに没頭しました。戦闘機パイロットや市長、アーティストや起業家、外交官や政策立案者、学者やジャーナリスト、テクノロジー分野やソーシャル・イノベーションに取り組む人々など、多彩な背景を持つ参加者を結ぶのは、信頼関係を築き、日米関係の未来を形づくるという共通の使命感です。
週の中頃には「フェローズ・ウィークエンド」が開催され、107名のフェローが加わり、同窓会のような賑わいに包まれました。プログラム史上初めて、フェローズ・ウィークエンドが東京以外で行われ、国内外から集まったフェローの熱意によって、会議全体が新たなエネルギーとつながりに満ちました。本レポートでは、その一週間を日ごとに振り返り、USJLP2025を特徴づけたアイデア、体験、そして関係性を紹介します。
会議は日曜日の午後、受付と、22名の2年目の先輩デリゲートから21名の新しい1年目の後輩デリゲートへの温かい歓迎から始まり、これが1週間の雰囲気とどのような体験が待っているかの案内となりました。その後、デリゲートたちは国を越えてペアを組み、「スピードミート」と呼ばれる自己紹介セッションを行い、続いてカクテルアワーとウェルカムディナーを楽しみました。
ディナープログラムは、幸運の共有と新たな門出を象徴する鏡開きのセレモニーから幕を開けました。プログラムでは米日財団からの挨拶と、各デリゲートによる簡単な自己紹介が行われ、伝統と祝祭、そしてこれから始まる1週間への期待感が交錯する開会となりました。
会議で最初の丸一日となったこの日は、信頼関係の構築と率直な自己開示をテーマに展開されました。午前中のワークショップはデリゲート自身によって企画・運営され、参加者は自らの人生の浮き沈みや、文化やアイデンティティを映し出す大切な品を持ち寄り共有しました。
その後のセッションはこの基盤の上に築かれ、文化的アイデンティティ、イノベーション、そして急速に変化する世界におけるリーダーシップについて、デリゲート同士が専門知識を交換しながら深く考える機会となりました。
🔹 イノベーションの触媒としての文化交流 — 国境を越える伝統やアイデアがいかに創造性を生み出すかをめぐる対話型セッションでは、USJLPそのものを文化融合の「生きた実験」として捉える視点を提示。
🔹 日本の地方の未来 — 伝統と革新がどのように共存し得るのか、また地方社会がどのように活力を取り戻し、新しい人々を受け入れつつ、その遺産を尊重しながら繁栄できるのかを探る対話。
🔹 「マイ・ストーリー」ランチトークではデリゲートが自身の経験、価値観、アイデンティティを語る短いプレゼンテーションを通じて、彼らの活動を導く背景を共有。
🔹 AI革命における緊急性、機会、リスク — AI政策、安全保障、社会への影響について日米双方の専門家が現実的な知見を交換し、急速な変化の時代における責任あるリーダーシップの具体的な指針の助言。
🔹 AI主導の世界で人間であることの技 — 個人のストーリーテリングや小グループでの対話を通じて、人間らしさを形づくる要素を見つめ直し、意味・つながり・創造性を強調するクロージングセッション。
夕方には文化体験が用意されました。1856年創業のミシュラン星付き茶寮「下鴨茶寮」でのミニ懐石ディナーの後、薄暮に包まれた清水寺を特別に閉門後に訪問。静かな光に照らされた境内を歩き、普段は非公開の文化財を鑑賞し、心静かな時間を過ごしました。最後には僧侶の大西英玄氏との特別な対話が行われ、清水寺の使命である禅の教えや精神的なつながりを現代に伝えるという思想的な示唆が語られました。
3日目 7月29日(火)
朝は軽快な交流アクティビティから始まり、エネルギーとつながりを生み出しました。その後のプログラムは、両国が直面する重要課題についての深い議論へと移りました。デリゲート自身の関心と専門性を基盤に、プレゼンテーションと小グループ対話を組み合わせたセッションでは、国家から地域までの文脈におけるガバナンス、安全保障、パートナーシップに関する切実な問いを見つめました。
🔹 変化の中のアメリカ社会 — 変動する国家政策の中で適応とレジリエンスを示す地域社会の事例を共有し、次世代リーダーへの教訓を考察。
🔹 変化する世界における同盟の強靭性 — 日本の人口動態、経済、安全保障上の課題が日米パートナーシップをどう再編し、新たなアプローチを求めているのかを探る日米対話。
🔹 グローバルなつながりにおける地方のリーダーシップ — 州・自治体・市民の取り組みが、連邦レベルを超えて日米関係をいかに維持・強化できるかを議論する円卓会議。
🔹 マイ・ストーリー・トーク — 違いをリーダーシップの強みに変えること、難民・移民支援を通じて政治的・文化的な分断に向き合うこと、共感を橋渡しのための戦略的投資として捉えることなど、個人的な体験を踏まえた発表。
🔹 未来に生かすヒロシマ — 平和構築、政策、異文化リーダーシップの声を取り入れながら、広島の教訓と遺産について考える親密な対話。記憶と責任、そして「二度と繰り返さない」という言葉の今日的意味を自由に語り合った後、小グループに分かれ、教育、家族史、個人的体験が自らの視点形成にどう影響したのかを共有し、翌日の広島訪問に備えました。
4日目 7月30日(水)
この日は京都を離れ、広島での学び、追悼、そして深い内省の一日となりました。デリゲートたちは新幹線で移動し、まずは地域に親しまれる広島風お好み焼きの料理教室から一日を始めました。チームワークと文化、そして味を通じて、温かく心をほぐす入口となりました。
午後は歴史と生きた証言に向き合いました。デリゲートたちは、原爆を体験した最年少の被爆者の一人であり、生涯にわたって平和と核廃絶を訴え続けてきた近藤紘子氏から直接話を聞くという、貴重な機会に恵まれました。率直さと深い思いやりをもって語られた家族の物語、そして和解に生涯を捧げてきたご自身の歩みは、新しい世代のリーダーが担うべき道義的責任を強く訴えるものでした。
続いて、広島平和記念資料館を訪問し、被爆者の証言、遺品、そして惨状を描いた展示を静かに見学しました。この体験は、核戦争がもたらす人間的被害と地球規模の影響の両方を考える契機となりました。その後、一部のデリゲートは近藤氏と共に振り返りのセッションに参加し、また別のデリゲートは平和記念公園で個人的に黙想の時間を過ごしました。
一日の締めくくりは、新幹線で京都へ戻る道中でした。車内では弁当を囲みながら静かな会話が交わされ、歴史と証言、そして深い省察に満ちた一日を通じて培われた視点を胸に京都へ帰着しました。
5日目 7月31日(木)
フェローが合流する前の最後の全日程は、内省、創造性、そして文化体験を融合させ、これまでの共有体験を土台にしながら新たな可能性を広げる一日となりました。朝は、春光院にて副住職の川上隆史氏(USJLP 2008-2009)の指導による英語での座禅が任意で行われ、マインドフルネスを体験しながら、その後の対話に臨む心を整えました。
🔹 分断を越える信頼構築 ― 政府、メディア、科学のリーダーが現代の分極化した世界において信頼を獲得し、修復し、維持する方法の探求と、小グループでの実践的ワークショップ
🔹 文化を越えるイノベーション ― 日本と米国においてイノベーションを促進あるいは阻害する要因の検討(創造性、政策、起業、社会規範を含む)と、新たな日常的実践を構想するインタラクティブ演習
🔹 マイ・ストーリー・トーク ― 廃材を芸術と希望に変える実践、困難をしなやかに乗り越える体験、過去を変革の原動力として捉え直す思索
🔹 可能性の都市デザインチャレンジ ― デリゲートが「USJLP-TOPIA」の都市計画者となり、日米の市民的想像力を融合させたビジョナリーな公共サービスの設計
6日目:8月1日(金)
フェローズ・ウィークエンド―USJLPの世代を超えた同窓会―は、週の前半の親密なデリゲート中心のプログラムから、より幅広いコミュニティが集う場への移行を意味しました。朝は、朝食交流会とミキサー、フェロー諮問評議会からの温かい歓迎、そして関心とつながりを促す短いデリゲート紹介から始まり、その後のセッションでは、USJLPの成果と今後の方向性が強調されました。
🔹 USJLPジャーニー 影響とつながりの個人史 ― メンバーが小グループで、自身の人生におけるプログラムの意味を象徴する瞬間、記憶、そして音を共有し、コミュニティの遺産を讃える創造的プロジェクトの基盤を形成
🔹 形作る未来:フィランソロピー、イノベーション、そしてUSJLPネットワーク ― フェローとUSJFのリーダーが、日本と米国におけるフィランソロピー、イノベーション、分野横断的協力について議論
🔹 関税と通商 ― USJF理事でありアジア・ソサエティ政策研究所副所長のウェンディ・カトラー氏による基調講演、米国と日本の通商・経済関係に関するインサイダー視点の提供
🔹 USJLPの未来構想 ― メンバーが次の10年に向けた大胆なアイデアを共創するインタラクティブな戦略セッション、その成果はUSJF理事会への正式提案に反映
🔹 テーマ別テーブルトーク ― デリゲートがホストとなり、各テーマや分野に特化した対話を展開
1日の締めくくりは、歴史ある鴨川沿いの会場・鮒鶴で開かれたフェローズ・ウィークエンド開会レセプションでした。カクテルと立食ビュッフェを囲みながら、参加者は西山酒造場の技と心を堪能しました。女将の西山桃子氏とスタッフの成瀬氏が登壇し、数百年にわたる酒造りの伝統を異文化交流の精神とともに語り、試飲を通じて共有しました。
カンファレンスの最終日となるこの日は、USJLPコミュニティ全体が集い、時宜にかなった洞察、創造的な協働、そして京都の街を舞台にした共通の探求を楽しむ1日となりました。午前中は「メンバー・スポットライト・トーク」から始まり、7名のフェローが登壇し、米日関係や世界の未来を形作る潮流について、それぞれ3分間のインサイド・スコープを披露しました。
続いて行われたのは、日本の「2025年選挙の余波」をテーマにした著名人による対話でした。河野太郎氏(USJLP 2000)、塩崎彰久氏(USJLP 2010–2011)、英利アルフィヤ氏(USJLP 2018–2019)と、『エコノミスト』東アジア支局長(USJLP 2024–2025)が登壇し、国内政治に関する率直な見解や日米関係への影響について意見を交わしました。その後、メンバーはUSJLPコミュニティのオリジナルソングの初演に立ち会いました。この楽曲は、シンガーソングライターのティファニー・トンプソン氏(USJLP 2025–2026)が前日のワークショップで共有されたストーリーをもとに作詞し、作曲家/ヴァイオリニストのチャド・キャノン氏(USJLP 2022–2023)、ピアニストの平田真希子氏(USJLP 2017–2018)、ドラマーの山口智史氏(USJLP 2025–2026)が音楽を共同制作しました。
午後は、デリゲートとフェローが企画・運営した少人数のエクスカーションが京都市内外で行われました。寺院や茶畑の舞台裏見学、建築ツアー、日本酒やウイスキーのテイスティング、侍の武芸体験、京都大学での交流など、多彩なプログラムが実施されました。これらの体験は、ネットワークの創造性とつながりを示すと同時に、共に新しい発見を楽しむことで絆を一層深める機会となりました。
夜には平安神宮でクロージング・レセプションが開催されました。最大の見どころは、セカンドイヤー・デリゲートが正式にフェローへと移行する「デリゲートからフェローへの卒業式」でした。彼らは、USJLPネットワークにおける生涯の役割を祝福され、歓迎されました。祝賀の場では、平田真希子氏、オペラ歌手の谷本綾香氏(USJLP 2023–2024)、チャド・キャノン氏が登場し、気候変動アクションをテーマとした音楽ショー「Music for the Oceans」からの作品を含む演奏を披露しました。フィナーレは、新しいUSJLPコミュニティソングの力強い合唱で締めくくられ、ティファニー・トンプソン氏、山口智史氏、チャド・キャノン氏、平田真希子氏が共演し、喜びと友情、そして伝統と革新が調和する忘れがたい瞬間となりました。
1週間の会議が幕を閉じるときに残ったものは、セッションやエクスカーション、祝賀の積み重ね以上のものでした。デリゲートとフェローは、国境や世代を超えてより深い信頼、新たな発想、そして強固な絆を携えて京都を後にしました。2025年度クラスはUSJLPの織物に独自の声を重ね、フェローはこの唯一無二のコミュニティを支え続ける決意を改めて確かめました。そこには、革新と伝統が出会い、個々の物語が織り合わさって日米関係の未来を描く共同のビジョンとなる、京都ならではの精神が息づいていました。
現在540名を超えるメンバーの力を背景に、太平洋を越えた信頼と協働の架け橋を築いてきたプログラムの歴史は続きます。次回は2026年7月25日から8月1日まで、米国カリフォルニア州パロアルトにてUSJLP年次会議が開催され、再びネットワークが集結します。
– ジョーダン・フィッシャー (USJLP 2024-2025), ゼヒトモ 共同創業者兼取締役会長、Antler Japan ベンチャーパートナー
「USJLPを通じて、これまで想像もしていなかった、あるいは出会うことのなかった人たちと深い友情を築くことができました。キャリアや人生で困難な選択に直面したとき、そばに立ってくれる友人がいることは本当に宝物であり、間違いなく私の人生に良い影響を与えています。職業や世代、バックグラウンドを超えた私たちのグループだからこそ、不確実な時代に直面するどんな課題に対しても、答えや解決策を見つけ出せるのだと思います。」
– 溝上 由夏 (USJLP 2024-2025), テレビ朝日 Abema Hills/Abema GLOBE プロデューサー、日本女性記者協会 共同創業者/理事
「日米関係の未来をめぐる深い議論、第二次世界大戦やAI、研究に関する省察、そして夜遅くまで続いたカラオケのアフターパーティーまで、両国から集まった素晴らしいメンバーとつながり、最も充実し、意味のある時間を過ごすことができました。毎日が72時間あるように感じるほど、一瞬一瞬に多くのことが詰め込まれていました。この経験から得た洞察や学びを、自分自身の地に足のついた誠実な行動へとどう統合していけるか、本当に楽しみです。」
– 山口 智史 (USJLP 2025-2026), RADWIMPS ドラマー、BEAT ICE 創業者兼CEO、慶應義塾大学SFC研究所 客員研究員
– テリー・ヴォ (USJLP 2024-2025) メトロ・ナッシュビル/デイヴィッドソン郡 地区17区議会議員、API Middle TN パートナーシップ・ディレクター
– ハンター・グルンデン (USJLP 2024-2025) 米空軍 中佐、F-35 教官パイロット、第60戦闘飛行隊 隊長
「USJLPは、まるで社会人のための『修学旅行』のような存在です。仕事の話から個人的な話まで、評価されることなく語り合える関係を築けることは、本当に稀で貴重です。この特別な環境は、意味深く、支え合える本物のつながりを育み、通常の職業的ネットワークを超えた、かけがえのない体験を提供してくれます。」
– 目黒 麻生子 (USJLP 2024-2025) 経済開発協力機構 「信頼性ある自由なデータ流通」首席調整官(事務局長) 兼 上席政策分析官
「USJLPフェローシップは、私の職業的にも個人的にも最も意味のある経験のひとつです。ここは友情と指導がまず最初に大切にされるネットワークです。」
– コフィ・バゼル=スミス (USJLP 2025-2026) アーティスト、教育者、プロボクサー、ロチェスター工科大学 Future Faculty フェロー
「USJLPは、生涯大切にすべきコミュニティだと信じています。この1週間は、自分の日々の仕事を新しい視点で見直す貴重な機会を与えてくれると同時に、何よりも生涯大切にしたい仲間と出会えることが最大の贈り物です。」
– 髙島 崚輔 (USJLP 2025-2026) 芦屋市市長
– 李 凌叡 (USJLP 2025-2026) Google LLC Play & Android グローバル政策チームリード
– デイブ・キャベル (USJLP 2025-2026) Dave Cavell Strategies 創業者兼CEO、前 カマラ・ハリス米国副大統領 首席スピーチライター