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アジアの安全保障

作成者: USJF|2026/01/15 8:06:32

ここ数か月、アジアの安全保障をめぐる問題は、メディアの見出しや専門家の議論の中心となっています。日本では憲法改正や防衛力強化をめぐる議論が加速する一方、米国は日米豪印戦略対話(QUAD)やAUKUSといった枠組みを通じて、地域同盟の深化を進めています。同時に、台湾海峡および南シナ海における緊張、北朝鮮による継続的なミサイル発射、中国の急速な軍備拡張などが、地域の戦略的安定性に対する懸念を一層高めています。

こうした動きは、アジアの安全保障をめぐる将来の枠組みについて、重要な問いを投げかけています。私たちは、インド太平洋地域における根本的な再編の只中にいるのでしょうか。それとも、国内政治上の圧力に対する戦術的対応が連なっているにすぎないのでしょうか。変化する文脈の中で、日本と米国はいかにして共通の目標を定義し、追求していくべきなのでしょうか。また、他の地域アクターはどのような役割を果たし得るのでしょうか。

米日関係における次世代リーダーを結ぶ中核的ネットワークである米日財団リーダーシップ・プログラムは、こうした課題を検討する上で、独自の立場にあります。本フォーラム初回となる今回は、学者、政策立案者、実務家など、多分野にわたる専門性を有するUSJLPフェローを含む、米日財団コミュニティの多様な視点を集めました。寄稿された考察は、現在の局面の複雑さを映し出すと同時に、今後に開かれた戦略的選択の幅を示しています。

中野 友朗

「自由で開かれたインド太平洋」は幻想となるのか

2016年に安倍晋三氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は、海洋の自由を共有することが地域の安定と世界的繁栄を支えるというビジョンを示したものでした。アジア経済が世界経済の中核を担うようになるにつれ、海上貿易への依存は一層深まり、開かれたシーレーンは持続的成長に不可欠な要素となっています。しかし、2022年の安倍氏の死去以降、インド太平洋地域の動向は、このビジョンから大きく乖離しつつあります。

中国は、沿岸警備隊や海上民兵の投入から、フィリピンなど周辺国への威圧に至るまで、南シナ海において強圧的な行動を強め、地域の安定を損なっています。台湾周辺で常態化しつつある軍事演習や、封鎖を実行し得る能力の誇示は、軍事的圧力を「常態」として定着させ、地域のパワーバランスに挑戦しようとする意図を浮き彫りにしています。さらに、ウクライナでの戦争を背景にロシアが北朝鮮との連携を深め、ミサイル開発や潜水艦といった海軍能力を支援していることは、東アジアの安全保障に新たな脅威をもたらし、海洋秩序全体の侵食を加速させています。

こうした権威主義国家による一連の行動は、アジア、ひいては米国の経済的将来を支える「自由で開かれた海」という根本原則を危機にさらしています。今後数十年にわたる米国の繁栄は、アジアとの経済的相互関係と密接に結びつくと予測されており、FOIPの防衛はもはや地域限定の課題ではなく、共有される戦略的要請となっています。

この状況に対応するため、日本と米国は、特に海洋分野および統合運用の領域において安全保障協力を強化し、安倍氏の戦略的ビジョンを再活性化させる必要があります。そのためには、技術的・作戦的知見の共有、宇宙アセットやAIといった新興技術を統合した共同運用構想の構築、そして信頼に足る即応態勢の維持が不可欠です。こうした能力をインド太平洋全域において定期的かつ可視的に展開することは、現状変更を力によって試みる行為に対し、協調した抵抗がなされるという明確な抑止メッセージを発することになります。持続的かつ実効性を伴う海上関与を通じてこそ、国際社会はインド太平洋を真に自由で開かれた海洋空間として守り抜くことができるのです。

ミカ・マーフィー

船体の先へ 同盟に求められる三つの海洋優先課題

アジアの安全保障はしばしば「複雑化している」と表現されますが、その点自体はここ数年変わっていません。変化しているのは、情勢の変化のスピードと、米国、日本、そして同盟国の対応が、中国の急速な軍備拡張に追いつけるかどうかという点です。中国共産党の海洋における野心は広く知られており、積極的な造船戦略による中国人民解放軍海軍(PLAN)の近代化は、すでに地域のパワーバランスを変化させています。一方で、日本における憲法改正をめぐる再活発化した議論や、日米豪印戦略対話(QUAD)やAUKUSを通じた米国の同盟関係の深化は、地域の安定に対する共通のコミットメントを示しています。ただし、その成否を左右するのは、対応の速さと連携の度合いです。

海洋の観点から見ると、特に重視すべき優先課題は三つあります。

第一に、造船分野における共同プログラムです。相互運用可能で近代的な艦隊は、単なる軍事力の強化にとどまりません。長距離にわたる作戦の持続性を確保し、調達や整備における規模の経済を同盟国にもたらします。

第二に、軍事・商業の両面における強固な海上輸送能力です。ロジスティクスは即応態勢の中核を成します。部隊、装備、物資を輸送する近代的な海上輸送能力は、危機対応を迅速かつ効果的にするだけでなく、平時における抑止力の維持にも寄与します。

第三に、定期的でありながら予測不能性を備えた共同・統合演習です。一貫性は同盟国間の信頼と即応性を高めますが、戦略的な予測不能性は、相手に行動パターンを読まれたり、利用されたりすることを防ぎます。

これらの取り組みを総合すれば、抑止力は強化され、航行の自由は維持され、日米同盟の信頼性も一層高まります。オーストラリアやインド、ASEAN諸国といった他の地域アクターも、このネットワークに強靭性を加え、インド太平洋の安全が二国間の問題ではなく、共有された責任であることを示す上で重要な役割を果たしています。

これは対立を煽るためのものではなく、備えの問題です。艦隊の互換性、輸送能力、柔軟な訓練への投資を通じて、米国、日本、そしてそのパートナーは、インド太平洋が、それに依存するすべての人々にとって、今後も開かれ、安定し、安全な地域であり続けることを、説得力をもって示すことができるのです。

トム・リ

人口動態は運命である アジア安全保障の高齢化

最も効果的な安全保障計画とは、特定の脅威に的確に対応するだけでなく、それに対処するために利用可能な資源を十分に見極めたものです。東アジアでは、北朝鮮の核開発、台頭し現状変更を志向する中国、そしてロシア・ウクライナ戦争がもたらした国際規範を揺るがす影響に対する不安が高まっています。これらの課題自体は新しいものではなく、過去数十年にわたりこの地域が享受してきた脆弱な平和を反映するものです。しかし、米国、日本、そして志を同じくする国々がこれらの脅威にどのように対処していくかを、より深く規定する要因は人口動態です。人口の高齢化と減少は、国益のあり方を変え、国内経済の不安定化を招き、国家の対応能力を制約すると同時に、新たな協力の可能性を開くことになります。

トランプ政権下において、米国は同盟国に対し、防衛費の増額、米国製兵器の購入、軍事的統合の深化を通じて、地域の脅威に対する責任をより多く担うよう求めてきました。とりわけ軍事統合の面では、日本の新たな国家安全保障戦略、防衛力整備計画、そして統合作戦司令部の設置を通じて、日米同盟は強化されてきました。しかし、日本が防衛能力を維持・拡大し続けることを期待するワシントンの姿勢は、人口動態や経済的制約を踏まえ、慎重に調整される必要があります。これは、いずれ米国自身も直面する運命でもあります。

2024年、日本は合計特殊出生率が女性一人当たり1.15にとどまり、人口が90万人以上減少するなど、16年連続の人口減少を記録しました。この人口動態の変化は、学校の閉鎖や労働市場の逼迫といった具体的な社会的負担を伴い、存在的危機とも言える感覚を生み出しています。65歳以上が人口の21%を超える世界初の「超高齢社会」として、日本は社会保障費の増大による財政的圧力にも直面しています。防衛計画の観点から見れば、人口の減少と高齢化は、募集可能な人員や納税者の減少を意味し、軍事近代化を持続させる能力を制限します。

最終的に、アジアの安全保障の将来は、外部からの脅威と同じくらい、国内の人口動態によって形作られることになります。米国と日本は、人口減少という避けがたい現実を踏まえつつ、共有する強みを最大限に活かす形で同盟を調整していく必要があります。

マーガレット・K・ルイス

行き、学び、行動する ジェローム・A・コーエンへの追悼

昨年刊行された回顧録の中で、著名な弁護士であり研究者でもあったジェローム・コーエン氏は、次のように記しています。「中華人民共和国との軍事的衝突に巻き込まれることなく、台湾の2,400万人の自由をいかに守るかは、米国が直面する喫緊の外交課題の中で最も重要なものの一つである。」

「ジェリー」と呼ばれるのが好きであったコーエン氏は、2023年11月に95歳で亡くなり、米国がこの課題にどう応えるのかを見届けることはできませんでした。しかし、台湾海峡の緊張に向き合うにあたり、私たちは今も彼の生き方から学ぶことができます。それは、「行き、学び、行動する」という姿勢です。

台湾海峡は、主として米中関係というレンズを通して語られてきました。確かに、習近平氏とドナルド・トランプ氏は、この地域の将来に大きな影響力を持っています。両者は韓国で開催されたAPEC首脳会議の機会に会談し、今春には北京で再会する見通しとされていますが、今後の協議で台湾がどこまで取り上げられるのか、ましてやどのような合意に至るのかを予測するのは容易ではありません。

ワシントンと北京のやり取りが続く中で、ジェリーであれば、台湾、そして日本や他のインド太平洋諸国に実際に足を運ぶことを私たちに勧めたでしょう。これらの国や社会もまた、地域の未来を形作る主体なのです。

たとえば台湾では、エネルギー安全保障から民間防衛に至るまで、社会全体で強靭性を高めようとする多層的な取り組みが進められています。こうした現場を自ら見ることは、台湾の人々が直面する外的脅威をどのように受け止めているのかを理解する上で不可欠です。一方で、行政と立法の間の対立や、現在機能不全に陥っている憲法裁判所の存在は、社会的結束を妨げる要因ともなっています。

あるいは日本を訪れ、台湾に対して支持的な姿勢を示し、中国に対して強硬な見解を持つ新たな首相が、地域の力学をどのように変え得るのかを学ぶこともできるでしょう。さらにオーストラリアでは、中国が最大の貿易相手国である一方、周辺海域での軍事的存在感を増しているというジレンマを、より実感をもって理解することができます。

そして、行動することです。60年以上にわたりアジアと向き合ってきたジェリーは、旅を通じて得た知見を、緻密な学術研究から実践的な政策提言に至るまで、幅広い取り組みに結びつけてきました。ジェリーを追悼し、私たちもまた、行動を始めましょう。